もう捨ててしまった方へ

賃貸借契約書をなくしたときにやること

相手方が、同じものを持っています。

賃貸借契約書は2通作り、貸主と借主が1通ずつ持つのが普通です。
貸主か管理会社に頼めば、写しをもらえることが多いです。

ただし応じる義務があるわけではありません。
宅地建物取引業法が定めているのは「契約のときに交付すること」であって、
あとから作り直す義務ではありません。

住んでいる間はほとんど困りません。
効いてくるのは退去のときです。原状回復や敷金の精算で、
契約書にどんな特約が書かれていたかが問われます。

動くのに期限があります
退去が決まっているなら急いでください。原状回復の請求は退去の立会いで決まります。 特約があるかどうかは、そのときまでに手元に無いと確かめられません。
再発行 手続きをすれば再発行できる
このページの内容

捨てて困るのはどんなとき

捨てたこと自体が問題になるのではなく、 必要になる場面が来るかどうかで変わります。 当てはまるものがなければ、急いで動く必要はありません。

早めに動く

退去することになり、原状回復の費用を請求された

ここがいちばん重いところです。

国土交通省のガイドラインは、
経年変化や通常の使用による損耗の修繕費用は賃料に含まれるとしています。
つまり原則として、借りた人が払うものではありません。

ただしガイドラインは法律ではありません。
契約書に有効な特約があれば、そちらが優先されます。
ハウスクリーニング代の負担、鍵交換費用、畳の表替えなどが典型です。

特約があるかどうかは、契約書でしか確かめられません。

立会いの前まで
手間が増える

敷金がいくら返るのか確かめたい

敷金の返還そのものは、契約書が無くても請求できます。
民法622条の2が、賃貸借が終わって明け渡したときに
「受け取った敷金の額から未払賃料等を控除した残額を返還しなければならない」
と定めているためです。

困るのは金額のほうです。
いくら預けたのか、何を差し引く約束だったのかは契約書に書かれています。
振込の記録が残っていれば、預けた額だけは示せます。

手間が増える

更新の時期や条件を確かめたい

普通の賃貸借なら、期間が過ぎても自動的に更新されます(借地借家法26条)。
契約書が無くても、住み続けている限り契約は続いています。

確かめたいのは更新料の有無と金額でしょう。
これは契約書の特約に書かれています。管理会社に聞くのが早いです。

困らない

退去してから何年も経っている

困りません。

敷金の返還も、原状回復の請求も、
権利を行使できる時から10年・知った時から5年で消えます(民法166条)。
精算が終わって双方から何も言われていないなら、
契約書を持っている理由はもうありません。

取り戻す手順

  1. 貸主か管理会社に、写しをもらえないか頼む

    どこに
    貸主、または管理会社
    費用
    無料〜コピー代
    かかる時間
    数日

    契約書は2通作り、1通ずつ持つのが普通です。相手方は持っています。

    頼むときは、次を伝えると早く進みます。

    • 物件名と部屋番号
    • 契約した年月(おおよそで足ります)
    • 重要事項説明書と契約書の両方が欲しいこと

    ★宅地建物取引業法が定めているのは、
    重要事項説明書を契約成立に交付して説明すること(35条)と、
    契約書に代わる書面を契約成立に遅滞なく交付すること(37条)です。
    再交付の定めはありません。 応じてもらえるのは好意によります。

  2. 仲介した業者に問い合わせる

    どこに
    契約のときに間に入った宅地建物取引業者
    費用
    無料〜コピー代

    管理会社と仲介業者が別のことがあります。
    貸主と連絡が取れない場合は、こちらに聞いてみてください。

    貸主が宅地建物取引業者でなく、仲介も入っていなかった場合
    (個人の大家と直接契約した場合)は、
    そもそも宅建業法が働きません。貸主に直接頼むしかありません。

代わりになるもの

元の書類が戻らなくても、同じことを証明できる別のものがあります。ただしどこでも通じるわけではありません。使える場面と使えない場面を分けて書いています。

代替

重要事項説明書(35条書面)

どこに
手元、または貸主・管理会社・仲介業者
費用
無料〜コピー代

契約書とは別の紙です。 契約が成立する前に、
宅地建物取引士が交付して説明することが義務づけられています。

「契約書をなくした」と思っている人が、
重要事項説明書だけ持っていることがあります。逆もあります。
まず手元をもう一度探してください。

家賃、敷金の額、契約期間、解約の予告期間など、
契約書と重なる内容がかなり書かれています。

これで足りる場面

契約の主な条件を確かめたいとき。

  • 家賃と共益費の額
  • 敷金・礼金の額
  • 契約期間と更新の有無
  • 解約するときの予告期間
これでは足りない場面

契約書そのものではありません。

署名押印して合意した内容の証拠としては、契約書に劣ります。
争いになったとき、相手が「そこは契約書で変えた」と言えば、
重要事項説明書だけでは反論できません。

原状回復の特約が契約書だけに書かれている場合、
重要事項説明書では確かめられません。

いちばん確かめたいところが落ちている可能性があります。

代替

国土交通省の原状回復ガイドライン

どこに
国土交通省のウェブサイト
費用
無料
かかる時間
すぐ

契約書が手に入らないまま退去する場合の、拠り所になります。

原状回復は「賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、
その他通常の使用を超えるような使用
による損耗・毀損を復旧すること」と
定義され、経年変化や通常の使用による損耗の修繕費用は賃料に含まれる
とされています。

負担割合も、建物や設備の経過年数を考慮して、年数が多いほど減らす
考え方が採られています。

これで足りる場面

退去時の請求が、一般的な考え方に照らして妥当かを判断したいとき。
契約書に特約が無ければ、この考え方が基準になります。

壁紙の日焼け、家具の設置跡、画鋲の穴といった典型的な項目について、
どちらの負担かが具体的に書かれています。

これでは足りない場面

ガイドラインは法律ではありません。

契約書に有効な特約があれば、そちらが優先されます。
ハウスクリーニング代を借主負担とする特約は珍しくありません。

つまり、ガイドラインを読んでも
「自分の契約に特約があったかどうか」は分かりません。
それを確かめられるのは契約書だけです。

★個別の当てはめは法律家の領域です。
金額が大きい、話がこじれている、という場合は
消費生活センターや弁護士に相談してください。

次に同じことを起こさない

次に契約したら、3枚まとめて写真を撮ってください。

  • 重要事項説明書(35条書面。契約の前にもらう紙)
  • 契約書(37条書面)
  • 定期建物賃貸借なら、「更新がない」ことを説明した事前の書面

3枚目は見落とされがちですが、
この説明をしていなければ更新がない旨の定めは無効になります
(借地借家法38条5項)。つまり普通の賃貸借として更新されます。

もうひとつ、契約書と一緒に残しておくと効くものがあります。
入居したときの部屋の写真です。

国土交通省は、原状回復の問題を
「退去時の問題と捉えられがちですが、これを『入口』すなわち入居時の問題と捉え、
入退去時における損耗等の有無など物件の状況をよく確認しておくこと」が
有効だとしています。

契約書は、敷金の精算が終わるまで捨てないでください。
退去した日ではありません。

賃貸借契約書はいつ捨てていい? 保存期間と条件別の判定は本体のページにあります。 次の1枚をどうするかは、こちらで確かめてください。

よくある質問

契約書が無いと、契約は無効になりますか?

なりません。

賃貸借契約は書面が無くても成立します。
契約書は、合意した内容を後から確かめるための証拠です。

普通の賃貸借なら、期間が過ぎても自動的に更新されます
(借地借家法26条)。契約書を捨てても、住む権利は消えません。

管理会社が写しをくれません。

義務ではないので、断られることがあります。

宅地建物取引業法が定めているのは
「契約のときに交付すること」であって、再交付ではありません。

貸主本人、仲介した業者と、当たる先を変えてみてください。
それでも手に入らない場合は、
重要事項説明書と、家賃の振込記録で条件を組み立てることになります。

敷金の返還は契約書が無くても請求できますか?

できます。

民法622条の2が、賃貸借が終わって明け渡したときに
敷金から未払賃料等を差し引いた残額を返還すると定めています。
契約書は要件ではありません。

ただしいくら預けたかを示せないと話が進みません。
契約時の振込記録や領収書を探してください。

退去の立会いに間に合いません。

立会いのときに、その場でサインしないでください。

金額に納得できない場合、「持ち帰って確認します」と伝えて構いません。
署名してしまうと、後から覆すのが難しくなります。

あわせて、部屋の状態を自分でも写真に撮っておいてください。
あとから契約書が手に入ったとき、照らし合わせられます。

定期借家だったかどうかも分かりません。

契約書と、事前の説明書面の2枚で確かめます。

定期建物賃貸借では、契約書とは別に
「更新がなく期間の満了により終了する」ことを説明した書面を
あらかじめ交付する必要があります(借地借家法38条3項)。

この説明をしていなければ、
更新がない旨の定めは無効になります(同条5項)。
つまり普通の賃貸借として更新されます。

管理会社に「定期借家ですか」と聞けば答えてもらえます。

根拠と最終確認日

このページの対処法に使った資料です。 その根拠が、この場面にどう関係しているかまで書いています。

e-Gov法令検索(デジタル庁) / 最終確認 2026-08-23
重要事項説明書(35条書面)と契約書に代わる書面(37条書面)が別の書面であること。交付義務が宅地建物取引業者にあり、再交付の定めが無いこと。写しをもらうのが権利ではない根拠。
国土交通省(住宅局) / 最終確認 2026-08-22
原状回復の定義と、経年変化・通常損耗の修繕費用が賃料に含まれること。経過年数を考慮する考え方。契約書が無い場合の拠り所になる一方、法律ではないことも。
e-Gov法令検索(デジタル庁) / 最終確認 2026-08-22
敷金の返還が、契約書の有無に関わらず法律上の義務であること。捨てても敷金を請求できる根拠。
e-Gov法令検索(デジタル庁) / 最終確認 2026-08-22
普通の賃貸借が期間満了で自動的に更新されること。契約書を捨てても住む権利が消えない根拠。
e-Gov法令検索(デジタル庁) / 最終確認 2026-08-22
定期建物賃貸借では事前の説明書面が必要で、説明していなければ更新がない旨の定めが無効になること。捨てる前に3枚あるか確かめる理由。
e-Gov法令検索(デジタル庁) / 最終確認 2026-08-22
債権の消滅時効(知った時から5年・行使できる時から10年)。退去から時間が経った場合に困らなくなる根拠。
このページの情報が古い・違うかもしれない

窓口や手数料は変わります。こちらの誤りもありえます。 気づいたことがあれば教えてください。 連絡先の入力は任意です。

参照された公的な案内の URL があれば、それも教えてください。

確かめたいことがあるときだけ使います。